2009年10月6日火曜日

ウソ小説。

「……"DEADSET/イグニション"」

コードネーム"ザ・キャンサー"の≪イストリア≫が発現する。
瞬時に全身にキチン質を構築し、鋼鉄よりも強固な甲殻を形成する。
数秒後には工場の屋根の上に、真紅の板金鎧(プレートアーマー)に身を包んだ戦士が出現する。
対峙する女性は悲しげに敵対行動をとったキャンサーを見つめる。

「キャンサーちゃん……」

その名を呼ぶ声は振るえ、琥珀色の目には悲しげな色が浮かぶ。
それだけでキャンサーの心は締め付けられる。
今、キャンサーの目の前にいる黒髪の美女の名はウル=カニャン。
組織の中でもキャンサーと親しかった≪マイスター≫の一人だ。
説得するなら、これ以上ない人選といえるだろう。

「……私は止まらないよ。 師匠の行方を探る邪魔をするなら、貴方だろうが……!」

だが、キャンサーの決意は変わらない。
尊敬し、慕っていた師が姿を消したのだ。音沙汰もなく。誰にも行方を告げないままで。
そして間もなく彼女らの主は師の抹殺を命じた。
師への尊敬と絶対たる命令。
二つの観念のジレンマにキャンサーは前者を選択したのだ。
そしてウルは――後者を選んだ。
それこそが彼女たちの運命をどうしようもないほどに分かつことになったのだ。

「だったら私も容赦はしない。本気でかかるよ。 すべてはお姉さま――シスター・アヴァロンのために!」

ウルの頭に獣の耳が生える。
それこそが彼女の本来の姿、獣化・猟犬(ゾアントロピー・タイプハウンド)。
だが、変化はそれだけに留まらない。

「――壱式。"雨に曇る"」

ウルの言葉に応えるように、その両手に霞がかかる。
キャンサーは知っている。
その霧に触れたものの、一切の防御は無効化されることを。
キチン質の甲殻を形成する"DEADSET/イグニション"との相性は最悪。
どうやらシスター・アヴァロンは本気でこちらを仕留めにかかってきたらしい。

「流石ジ・アールきってのどエロ能力者(マイスター)……≪イストリア≫からしていやらしい!」
「ど、どエロじゃないもん!」

軽口を叩きながらも、まったく隙が見当たらない。流石は一流のマイスターだ。
敵との相性は最悪で、しかも時間をかければかけるほど追手は増えていく。
どう贔屓目に見ても絶体絶命の状況だ。
だが、プレートメイルの間から低い笑い声が漏れ出す。
そう、危機と好機は紙一重。
このような状況こそ、最もキャンサーという少女を昂ぶらせる。
例えそれが一刻を争う事態であり、親しい友人との永遠の別れだったとしても、だ。

「ウル……精一杯、楽しんで、そして別れよう!」
「……ええ、さようなら。我が愛すべき友人!」

工場の屋根の上に沈黙が落ちる。
それはたったの一瞬のことで、次の瞬間、二つの名乗りがその沈黙を切り裂いた。

「"獅子の瞳(レグルス)"、ザ・キャンサー……参る!」
「ジ・アール6魔柱が一人、"殲滅獣吼(ビースティッド・エンド)"ウル=カニャン……ザ・キャンサーを撃滅する!」

月明かりの下、2人の魔人は激突を開始した。

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うーん、最近文章が乗らないのう。
リハビリ代わりに脳内妄想をボダボダと書いてみたが、いまいち自分の文章が好きになれない。

あ、今回の文章は試しに書いてみた"それっぽいもの"であり、実在の人物とか計画してるオリジナルとかは1mmも関係ございません、ええ。