2013年2月16日土曜日

第4回パロロワ名作劇場

なおやっぱり独断と偏見によって語りますので、十中八九作者の思惑からは外れたりしますがご了承ください。

今回はこちら。

第4回:My Best Friend(モバマスロワ 第37話)


http://www58.atwiki.jp/mbmr/pages/163.html


~意外性と綺麗なリレーは両立できるか? できる。 できるのだ~


さて、異常なほどの爆速ぶりを誇るアイドルマスターシンデレラガールズロワ、通称モバマスロワであるが、そのうちの一作であるこの作品を読んだとき、頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。

というのも、この話の前話は親友が別の親友のために奉仕マーダーになるのを止められない、という引きだったのだ(タイトルからしてしばらく会う事はないだろうイメージが色濃い)
そのため同キャラで予約されたとき、つい考えてしまった展開が『退路を断つために殺されてしまうのではなかろうか』という予測であった。

モバマスロワは人知を超えた特殊能力を持つ人間のいない、いわゆる"一般人ロワ"である。
そして一般人は通常の状態ならば当然、殺人を忌避する。そのため土壇場で『殺し損ねる』可能性がある意味高いのだ。そして一度殺し損ねてしまうと作劇的に『逃がし癖』が付いてしまうのだ。それを回避するために加蓮は死んでしまうのではないか、と。


――まぁ、結論から言うと、全力土下座モノの考えであったのだが。


そこにあったのは『その奉仕対象およびマーダーを助けるため、自分も手を汚す加蓮』という、(少なくとも自分にとっては)意外な展開であった。

いや、前話で2人の十二分に友情は描写されていたし、考えれば可能性はあったのだ。
だがその可能性を排除していたのは自分が(悪い意味で)ロワ慣れしていたということなのだろう。パターンから言って、また全開の引きからいって、当然、加蓮は引き止める側に回るであろう、と無意識的に方向性を限定したいたのだ。

しかしリレー小説の最大の面白さとは、その話を書いた当人にも今後どうなっていくかわからない意外性にある、と考えている。
その点においてこの話はその"意外すぎる展開"だ。おそらくは前話をかいた人もこの流れはまったく予想できなかったのではないだろうか。
また、ここで重要なのは「その可能性はあった」と思わせられた点である。つまり前話から流れで読んでも違和感がまったくないのだ。

前話から矛盾無くつないだ上で、予想を超える展開を生み出す――リレーSSとしてこれ以上に理想的なリレーがあるだろうか?


さらにそこに直前で鮮烈デビューしたジョーカーを投入する事によって、話をよりおいしく引き立てて、話単品としても高いクオリティを見せ付けてくれている。これにはもう『お見事!』という他ない。


さて、そうして誕生した奉仕マーダーコンビであるが……これがまた独自性をもった良いコンビなのである。

彼女たちが特徴的であるのは『奉仕対象がまったく同一』であるという点だ。
奉仕マーダーコンビで奉仕対象が異なる場合、片方のみ奉仕対象が死ぬ事が十分にありえ、そうなるとコンビ崩壊待ったなしである。また微妙に"ずれ"があるため互いを信用しきれず、疑心暗鬼に陥り仲違いもしやすいのである(それはそれでおいしいのであるが)
その点、同一彼女たちは奉仕対象を持つコンビのため、また彼女たち自身も友人であるため、強固な絆があるのだ。この点は単一作品ロワならではの独自性といえるだろう。

また彼女たちが良いコンビであると同時、北条加蓮というキャラクターに対しても掘り下げている点にも注目したい。
モバマスはキャラメッセージとプロフィールがキャラ構成のほぼ全てであり、そのため他の作品よりも"キャラの掘り下げ"が"キャラクター造詣"に直結するのである。
事実、原作においても加蓮は(他のキャラに対する独自性という面で言えば)病弱である事、奈緒や凜と仲が良いのであろうことが読み取れる程度に留まっている。だがしかしこの話によって『友情のためなら自分の手を汚す事もいとわない』という独自のキャラ造詣が加わったことにより、より魅力的なキャラクターになったのだ。次の話でまだどこか迷いが残ってしまっている奈緒との対比が行われる事となるが、それの始まりはこの話にあるのだろう。


さて、そんな彼女たちであるが、現在、キルスコアも稼ぎつつ、2人とも無事かつ奉仕対象がいまだ生存中という非常においしい状態である。これから彼女たちがどんな方向に進み、そしてどのような結末を迎えるのか目が話せない状況だといえるだろう。


作者としては奇をてらったつもりなど無いのかもしれない。しかしこの話を読んだとき、自分はただ唸るしかできなかった。『読者の期待は裏切らずに予想を裏切る』というのは、理想の作劇として良く聞く話だが、自分としてはこの話がそうであったのだ。

是非、全体を追いかけるついでにでも、彼女たちを追いかけてほしい。この作品の『意外性とリレーの両立』がうまいバランスで成り立っている良作であることがより強く認識できるだろう、とおもえるので。


……ウーン、読み返してみたがやっぱ好きだわこの話。

2013年2月5日火曜日

第3回パロロワ名作劇場

久々の更新である。
なおやっぱり独断と偏見によって語りますので十中八九作者の思惑からは外れたりしますがご了承ください。

第3回:GAME OVER ~Thank you for playing!!~(新安価ロワ最終回)
~爽快感溢れる最終回~


とりあえずコレを読んだときの気持ちは『物凄いものを読んでしまった』。これに尽きた。

『これは新作ゲームのロケテである』、という他のロワにないOPから始まった本ロワは、別名クソゲロワとも呼ばれるほどの書き手の暴そ……もとい、ロマサガもビックリの自由度とソニックもビックリのスピードで話が進んでいった。
故に自分はこのまま突き抜けるような、そんなパワー全開の、力任せの最終回を想像していたのだ。
だがしかし、そこから飛び出してきたのはシリアスかつ、一片の無駄もない完成された最終回だったのだ。



そんな訳で好きな理由を考えてみたがとりあえず3つほど思いついた。


*その1 生かされる独自性

パロロワwikiを見てもらえばわかることだが、現在パロロワというものは非常に多岐にわたっている。故に各ロワで差別化というか、独自性を生かすことが重要だと思うわけである。
そんな中、新安価ロワの独自性は完結スピードだったり、自由度だったりももちろんあると思うのだが、個人的には『二つの世界が描かれる』という点を推したい。

前述の通りこのロワはアーケードゲーム(という体)なので、ゲーム内の出来事に加え、ロケテという外の環境も描かれる。しかし最終回一話前の74話まで、それは基本的に一方通行の出来事として描写されてきた。(クソゲー→アンケートにもう余白がない/台パンからの出禁コンボ/好きなキャラは本バージョンでは使えないので帰宅……etc)

しかし最終回においてゲーム内と現実は互いに干渉しあう。
現実世界でプレイヤーが時間を稼ぎ、ゲーム世界で意思を持ったキャラクターが敵の本丸に突入する。二つの最終決戦は平行して進展し、最後は"一つになった"。
こうして『現実』と『ゲーム』という二つのフィールドがあるという独自性を描きつつ、最後は一つに昇華させたのである。
これ以上ない相応しいラストであり、もうお見事という他ない。


*その2 絶妙なカタルシスのコントロール

さて、カタルシスを得る為の鉄則といえば『落として上げる』、コレに尽きる。
しかしこの最終回はそれだけでなく、『落として上げてそのまま綺麗に着陸完了』といった感じに、アフターサービスまで万全ななのである。

ゲームゆえのループによる無情さとほむらの孤独と絶望をしっかり描写(落とす)
→しかしそれを打ち破るための仲間が手に入る(上げる)
→それを打破するための現実とゲーム内、両方で行われる最終決戦(さらに上げる)
→リッド編EDへ(ソフトランディング開始)
→原作、おりこ☆マギカを生かした展開(ソフトランディング2段階目)
→そしてゲーセンED(これ以上なく綺麗に着地)

……この流れが淀みなく行われているのである。
そこに無駄な箇所がなく、リズムよく読ませてくれるので読後感が抜群にいい
ロワSSを読んでここまですっきりするとは正直思ってませんでした、ええ。



*その3 愛だよ、愛

最終回タイトル、QMZがほむらに語りかける台詞、ほむらのラスト状態表の文字化け、そしてなによりラストシーンにゲームや、ゲームセンターに対する"愛"が溢れていると思う。
他のロワで『原作に対する愛』が溢れる話は見かけることがあるが、ゲームという『特定ジャンルそのものに対する愛』が見られる話というのは他に類を見ないのではなかろうか。

正直自分はロケテどころか、ゲームセンターにあまり行かない人間である。
……が、それでもちょっと行きたくなるような、そんな『こういうのが好き』というのが感じられたような気がするのだ。ラストシーンのモブの台詞がたまらなく心に響くのはやっぱり作者のそういう"愛"ゆえに、ではないだろうか。



……とまぁ色々理屈(?)を捏ねてみたが、そんなものがどうでもよくなるぐらい良い最終回だった。

本編も殆ど数レス×74話というリズムの良さで読めるので、暇なときにサクサク読んで、パロロワ屈指の爽快感溢れる"エンディング"を体感してほしい。
そしてその後30話オーバーのエピローグを満喫してほしい。何かすごいから。
なお、出来ればスピード感を重視するため一気読みを推奨する。



……ウーン、読み返してみたがやっぱ好きだわこの話。